2015年4月29日水曜日

[業務知識][生命保険]保険の設計

 近年の生命保険は、電子計算機を使った保険設計ができるようになってきている。保険設計とは、保険を提案する代理店や募集人が契約者となりうる人のニーズに合わせて保険を設計することを指す。
 各保険会社とも電子計算機による保険設計システムを持っており、契約年齢や性別、提案する保険の種類、保障内容などを選択することで、契約者に合わせた最適な保険を設計できる。一度保険を提案し「もう少し医療保険の保障を増やしてほしい」「保険料を安くしてほしい」といった要望を受けて、再設計することもできる。電子計算機システムによる保険設計がなかった時代は、パンフレットを持って行って提案や説明を行っていたが、これだと合計保険料や保障内容がどうなるのかが分かりづらく、いざ契約してみると意図した保障内容になっていなかったり、保険料が聞いていたものと違ったりといったトラブルになることがあった。
 個人の細かいニーズに対応して保険を柔軟に組み合わせることができる保険設計の考え方は、今後ますます重要になってくると考えられる。

[業務知識][生命保険]保険の種類

 毎年12月に年末調整の書類を提出する会社が多いが、その年末調整の書類にも保険の種類を書き込む項がある。保険の種類は分類方法によって様々であるが、年末調整の用紙に記入する保険の種類などが代表的な分類である。
 「養老保険」はかんぽ生命が取り扱う保険商品であり、満期時に保険金が受け取れるものである。養老保険はやや特殊な保険で、貯蓄型保険の側面を持っている。満期を迎えないうちに亡くなった場合は保険金(たとえば1000万)が受け取れるし、満期になれば満期時保険金(たとえば200万)が受け取れる。掛け捨てではない貯蓄型の保険なので、月払い保険料も高い商品が多いが、それは将来的な満期保険金の支払いで戻ってくるものである。
 定期保険は10年などの一定期間契約する保険で、当該保険期間内に被保険者の死亡などの保険事故があった場合の保障を受けられるタイプの保険である。
 終身保険は一生涯保障が続くものであり、保険料は上限年齢まで払い込みを行った後は支払う必要はなく、保障は一生涯続くタイプが多い。

[業務知識][生命保険]契約年齢と契約期間

 保険を契約するときの年齢を契約年齢といい、保険を契約する期間を契約期間という。生命保険は被保険者の死亡という保険事故が起きる可能性を計算して保険料を決めている。現在の日本では概ね年間で105万~110万の人が生まれ、120~125万の人が亡くなる。年齢別の死者数を見ると、死者120万人に占める0~15歳の人数は3500人程度と0.5%を切るくらいに少ない。逆に40歳からは急激に死者数が多くなり、平均寿命とされる70~80歳の年齢を頂点として概ね正規分布の曲線を描く。
 契約年齢が高い(たとえば40歳)だと、被保険者の死亡という保険事故が起きる可能性が若い人(たとえば20歳)と比べて格段に高くなる。そのため保険料もそれだけ割高なものとなる。保険の引き受けは70歳や80歳まで行うこともあるが、その場合は本人の死亡という保険事故が保険期間中に起きる可能性が非常に高いため、保険料も保険金に近い額を支払わなくてはならない。
 保険の契約期間は商品によって様々である。一生涯の安心をうたう終身保険は契約期間は上限年齢になるまでずっとであり、高齢者向けのちょっとした入院保険などは5年ものなどの短い保険期間のものも存在する。それ以外の保険は契約期間が10年のものが多い。10年経過したときに、保険料を増やして再度10年契約するか解約するかを選択できる。

[業務知識][生命保険]保険金と保険料

 保険者の保険金支払義務を具体化させる事故を保険事故という。生命保険においては、被保険者の死亡が保険事故に該当する。保険事故が起きた場合、受取人は保険金を受け取ることができる。例えば家族の働き手である世帯主の男性(被保険者)が亡くなった場合、保険金の受取人である配偶者は保険金を受け取ることができる。
 保険事故が起きた時に支払を受けられるお金のことを「保険金」という。これに対し「保険料」とは、保険による保障を受けるために支払う掛金のことを指す。一括払いや年払いといった特殊な払い込み方法もあるが、ほとんどの場合保険料の支払いは月払いである。

[業務知識][生命保険]主契約と特約

 保険には特約を付与することができる。従来型の保険は一家の大黒柱たる世帯主(男性)が万一の病気や事故で亡くなった場合に備えて、死亡時保険金を支払うタイプのものが主流であった。これは残された家族のことを考えた保険であるが、最近では「リビングニーズ特約」というものを付与できる保険が多い。被保険者が病気などで余命を宣告された場合、生きている間に保険金を受け取って、どのように使うかを本人が自由に決められるというものである。また保険金の支払いを受けられる状態になっても、被保険者が病気のため手続きがままならない場合などに、予め指定された代理人が代わりに保険金支払いの手続きを受けられる「指定代理人請求特約」なども一般的である。
 特約は単独では申し込むことはできず、必ず特約を付与する主契約が必要となる。主契約とは一般的に売り出されている保険のことを指す。保険のパンフレットに掲載されている「○○保険」が該当する。

[業務知識][生命保険]解約返戻金

 単に「解約金」「返戻金」ともいう。保険を解約した際、契約者に払い戻されるお金のことを指す。従来型の生命保険は30年、40年と保険料を支払い続けると、解約したときにこれまで支払った保険料の合計よりも大きい金額の解約時返戻金を受け取ることができた。今の時代にそのような話を聞くと新手の詐欺にしか聞こえないが、これは事実である。
 保険会社は契約者から集めたお金をただ保管するわけではない。集めたお金を資産運用して、インフレなどのお金の価値が下がってしまうリスクに対応しているのである。戦後、日本は約45年間ほぼ一貫して右肩上がりの経済成長を続けてきた。このような時代の資産運用は「勝ちっぱなし」の状態になるため、解約時返戻金が払い込んできた保険料を上回るような運営も可能だったわけである。
 しかしバブル崩壊後の不況は「失われた5年」「失われた10年」、今では「失われた20年」ともいわれ、実感がともなう景気上昇の局面がほとんどなかった。デフレはお金の価値が上がるものの、資産運用すると資産の価値は下がりやすく、以前と同じような運用成績を上げられない。このため現在の生命保険は解約時返戻金を少なくしたり、全くなくす掛け捨てタイプの保険が主流となりつつある。

[業務知識][生命保険]相互会社と株式会社

 従来の保険会社は世間一般にある「株式会社」ではなく、「相互会社」として運営されてきた。保険の考え方は「みんなで少しずつお金を積み立てて、困ったことが起きたら使いましょう」というものである。この考え方は、株式会社のあり方と一致しない。株式会社とは広く社会に浮遊しているお金を集め、営利を目的として設立される会社であるため、利益の追求が第一である。保険会社を利益第一の株式会社としてしまうと、保険金が必要になったときに何だかんだと理由をつけてお金を払わなかったり、不当に高い保険料を取る割に保障内容が全く保険料に見合わないなど、保険が本来目指している役割を果たせないと考えられてきた。
 しかし1996年の保険業法改正により、保険会社を株式会社とすることができるようになった。株式会社は株主からの出資を受けることができるので、その分保険サービスも充実させられるし、収益が上がればよりよいサービスを提供することもできるようになる。そもそも高い保険料だけ取って、保険金を支払わない保険会社は潰れるしかないので、株式会社の形態をとって自由な競争を行わせた方が生命保険の質が高くなるという考え方である。
 1996年の規制緩和が行われた頃、生命保険会社による保険金不払い問題というものがマスコミで盛んに取り上げられた。たとえ相互会社の形態をとっていても、悪い人間が内部で悪いことをしていたら結局相互会社本来の機能を果たせなくなるという厳しい論調が多く、各保険会社とも対応に追われた。